ヒトの世界観~進歩か循環か
今日、私達が直面している気候変動や環境、核の問題など世界的な
危機について著名な哲学者の梅原猛が興味ある指摘をしているので、
そのエッセンスについて私の理解を以下に要約します。
多忙な日常から少し離れて私たちを取り巻く課題に思いを巡らすのも
大切な事かなと思います。
関心のある方は当該著書(後記)をご覧ください。
―日本人の世界観
狩猟採集民族の子孫である日本人は農業の伝来が遅れたこともあり
動物や植物にもヒトと同じように命が宿っており、全ての生き物は
永久の”生死の循環”を繰り返すという心性を心の奥深くに持っている。
端的な例として、生きている植物の命をむやみに奪うことを厭うので
現在でも国土の60%以上に森林が残っており、このような地域は
世界に類を見ない。
―西欧人の世界観
早くから農耕牧畜文明が栄え豊かな富を得た西欧人はヒトが動植物
や自然を支配するという人間中心主義の世界観を持つた。
例えば、農耕のために大規模に森林を伐採して焼き畑農業を行い、
わずかに残った草地で牧畜を行った結果、アフリカでは地球規模の
砂漠化を招いてしまった。
―進歩から循環へ
<一方的な進歩は善?>
梅原は「近代文明は人間中心主義という大きな病に悩んでいる。
この世界観はヒトの生存にとって非常に危険な考え方である」と
指摘する。更に、人間中心の考え方と科学技術が結びつき地球を
ヒトの欲望に従って一方的に作り変えようとして人類の生存を
脅かす状況になっているとも示唆している。
<生死の循環>
科学技術によってヒトが動植物、自然を作り変えるなどと考える
ことは人間の傲慢で実現できるものでは無い。この傲慢に対して
ヒトは高い代償を払うことになる。ヒトを始め生き物は皆、”生死の
循環”を繰り返すという世界観が、この誤った人間中心の世界観に
とって代わらなければヒトの社会の存続は危うい。
梅原はこのように述べています。
参照:『日本人の「あの世」観』(p.101~p.106) 梅原猛 著
(中公文庫)
追記)梅原はiPS細胞の開発に反対しています。

Staff M.T
NAOはり灸院