不妊治療(その3) 東洋医学の視点
今回は、東洋医学の「不妊」の考え方と手当について分かりやすく述べてみます。
1.自然治癒力
私たちの身体は、生命を維持し健康な生活を送るために「ホメオスタシス(恒常性)」という大切な働きを生まれながらに持っています。この働きのおかげで例えば、血圧や体温を一定に保たり、病原菌やウイルスの侵入を防ぎ、あるいは病気やケガの傷が治って健康的な生活を送ることができます。
この「恒常性」は免疫系、内分泌(ホルモン)系および自律神経の働きが複雑に連携して作用する「自然治癒力」によりコントロールされています。
2.不妊の原因
東洋医学では「冷えは万病のもと」と昔から言って、「不妊」についても「冷え」がもたらす「自然治癒力」の低下が根本的な原因と考えます。即ち、自然治癒力が働きにくくなることで様々な生殖機能の衰えが起き、「妊娠力」が下がり不妊に至ります。
◇身体の「冷え」
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◇「自然治癒力」の低下/免疫力、再生力、自律神経の働き、妊娠力等の低下
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◇「不妊」/未病 (機能性不妊):原因が分からない
〃 /不妊症(器質性不妊):検査で特定できる
3.病的な「冷え」
「不妊」につながる「冷え」の多くが生活習慣や生活環境とそれに付随するストレスによってもたらされます。例えば、次のような状況が継続的に続くことにより自律神経の働きが低下して身体のバランスが崩れます。それに伴って、身体の中で作られた熱を全身に運ぶ役割を持つ血流の働きが悪くなり、回復しにくい病的な「冷え」が起きてしまいます。
-身体を冷やす飲食
-外気による冷え、エアコンの使い過ぎ
-長時間労働、運動不足、睡眠不足
-パソコン、スマホの長時間の使用
-家庭、学校、会社での人間関係
-気候の変動(温暖化)
繰り返しますが、「冷えは万病のもと」です。先ずは、生活習慣を見直し適切な「冷え対策」を行って妊娠力を初めとする自然治癒力を回復する自助努力が大切になります。
4.鍼灸による手当
病的な「冷え」がもたらす不妊体質の改善には、全身治療の鍼灸が有効な選択肢となります。以下に、その診察と施術について要約します。
<「気血」について>
東洋医学では「冷え」は「気血」の不足や滞りによると考えます。
「気」は元気、病気、気持ち、気合、勇気・・・などと使いますが、私たちの生命活動のエネルギー源になるものです。「気」の形は捕らえることは出来ませんが、その働きは日常の生活で実感できるものです。
「血」は全身に必要な栄養を運び、老廃物を回収して私たちの健康を保つ働きをします。いわゆる血流の働きと考えて良いと思います。
<診察>
問診と四診(視る、聴く・臭う、尋ねる、触診)を行って「気血」の不足や滞りの原因と箇所を診察し、体質(東洋医学では「証」と言います)の診立てを行います。
(注)詳細はホームページの「診療案内」タグ欄を参照してください。
<施術>
体質の診立てに応じて、経穴(ツボ)を鍼の物理的な刺激と灸の温熱刺激を適切に使って「気血」のめぐりを良くすることにより「冷え」をとり不妊体質の改善を図ります。
「自然治癒力」が正常な状態に回復することで原因が分からい不妊(機能性不妊)だけでなく不妊症(器質性不妊)の治療効果も高まることが期待できます。

NAOはり灸院